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昇圧チョッパー回路にあったMOSFETを考える

本記事では昇圧回路の実験を行っていきます。最終的には300V以上の電圧まで発生させることができました。同様の実験を行う際は、非常に危険ですので、絶対にコンデンサの端子などに触らないでください。

高電圧を大容量のコンデンサに貯める行為は非常に危険です。実際に行う場合は自己責任でお願いいたします。

また、高周波の電磁波も出る場合があります。電子機器等に悪影響を及ぼす可能性があります。物品が壊れたとしても一切責任は取りません。

実際に実験される方は危険な回路を作っていることを自覚しながら作業するようにしてください。

昇圧チョッパー回路にあったMOSFETを考える

前回のブログで昇圧チョッパー回路のインダクタとスイッチングについて記載しましたが、今回はMOSFETの選定方法について記事を書いていきたいと思います。

といっても、細かい知識がないので秋月電子で販売しているMOSFETを複数種類購入し実際に昇圧チョッパー回路に組み込んで、どれがより高くコンデンサを昇圧できるかを実験していきます。

先に書いた「昇圧チョッパー回路について考える」について、まだ読まれてない方は先に読まれた方が良いと思います。ぜひご覧ください。

❶回路の条件

今回使用する昇圧チョッパー回路の回路図は上記の通りです。

MOSFETの比較をしたいのでそれ以外の部品やMOSFETのスイッチング時間は統一させます。

  • 電源:9V
  • インダクタ:470μH 定格電流9A
  • ダイオード:1N4007
  • コンデンサ:450V 470μF
  • MOSFET:比較対象 スイッチングのNO/OFF時間はともに470μs

➋実験するMOSFETも選定

今回の実験ではコンデンサが300~400V程度まで充電されると想定されます。最低限この電圧に耐えられるMOSFETを選定しなければなりません。

なのでドレイン・ソース間電圧「VDSS」は400V以上のものを選定します。

本来はドレイン電流「ID」も想定される最高電流値の9A以上としたいのですが、比較対象が少なくなるので今回はドレイン・ソース間電圧「VDSS」のみの数値で対象とするMOSFETを選定しました。

また、お金もあまりないので、1個150円以下で買えるものとします。

対象となるMOSFETは下記の13点となりました。

  • 2SK3115
  • 2SK3234
  • TK10A60D
  • TK10Q60W
  • TK13A60D
  • TK15J50D
  • TK2Q60D
  • TK3A60DA
  • TK4Q60DA
  • TK6A65D
  • TK6Q60W
  • TK7Q60W
  • TK8Q60W

(条件に合うMOSFETには「2SK2698」、「MTN4N60CI3」の2点も含まれていたのですが残念ながら在庫を切らしていました。)

❸実験内容

前回と同じ下記の写真の回路構成でMOSFETを差し替えて試験していきます。

MOSFETのゲートへ送る信号は前回と同様に自作のゲートドライバーとArduino Unoを使用します。

MOSFETごとに

  • 5秒間コンデンサを充電して電圧がいくつになっているか

を測定していきます。

❹結果

品番5s後のコンデンサ電圧ドレイン・ソース間電圧(V)ゲート・ソース間電圧(V)ドレイン電流(A)入力容量(pF)帰還容量入力容量(pF)出力容量入力容量(pF)ゲート抵抗(Ω)上昇時間(ns)ターンオン時間(ns)下降時間(ns)ターンオフ時間(ns)ゲート入力電荷量(nC)ゲート・ソース間電荷量(nC)ゲート・ドレイン間電荷量(nC)ゲートスイッチ電荷量(nC)金額(円)
略称結果VDSSVGSSIDCissCrssCossrgtrtontftoffQgQgsQgdQSW\
TK15J50D320500±301518009190 408015110382414115
TK13A60D310600±3013230010250 5010025140402515120
TK10Q60W292600±309.77002.3207.522455.575204.59.540
TK8Q60W288600±3085702.5167.520405.57018.53.5940
TK7Q60W266600±3074901.71371840755153.2860
TK10A60D257600±301013506135 22551510025169100
2SK3234256500±30 8970181102125258025411150
TK6Q60W245600±306.23901.712 1840755123630
2SK3115236600±306110020020 121815502661060
TK6A65D236650±30610505100 256010752013780
TK3A60DA164600±302.53802.545 153575595450
TK4Q60DA145500±303.5490355 1840855116510
TK2Q60D104600±3022801.530 153575574330

やはりドレイン電流「ID」は高い方がコンデンサ電圧が高い傾向があることがわかります。

今回の回路では最高で電流を9A流すことを想定していましたので、ドレイン電流「ID」も9A以上が良いといえます。

私はスイッチングにかかわるパラメータ、特に下降時間「tf」、ターンオフ時間「toff」が小さい方が良い結果が出ると予想していましたが、そうでもなさそうです。

といっても、ドレイン電流「ID」が高いものはスイッチングにかかわるパラメータも高くなる傾向があるので、ドレイン電流が大きく下降時間「tf」、ターンオフ時間「toff」が小さい方MOSFETがあれば理想に近づくかもしれません。

本試験の結果から、今回の回路構成で電圧を上げたいなら「TK15J50D」、安く小型の回路にしたいなら「TK10Q60W」がよさそうです。